中古車店では、車検の有効期間内のため購入後に車検を受ける必要がない車も販売されています。
しかし自動車には、車検以外にも定期的に受けなくてはいけない法定点検があることをご存知でしょうか。道路運送車両法によって、自動車は12ヶ月ごとに受けなくてはいけない法定点検(一年点検)が決められています。
こちらでは、「12か月点検について」詳しく解説します。
法定点検の12か月点検とは
12か月点検とは、下記の道路運送車両法の定期点検整備第四十八条で定められている、大型トラック等やレンタカー等を除く自家用自動車が12か月(一年)ごとに受ける必要がある定期点検のことです。
道路運送車両法 定期点検整備 第四十八条
自動車の使用者は、次の各号に掲げる自動車について、それぞれ当該各号に掲げる期間ごとに、点検の時期及び自動車の種別、用途等に応じ国土交通省令で定める技術上の基準により自動車を点検しなければならない。1 自動車運送事業の用に供する自動車及び車両総重量八トン以上の自家用自動車その他の国土交通省令で定める自家用自動車 三月
2 道路運送法第七十八条第二号に規定する自家用有償旅客運送の用に供する自家用自動車(国土交通省令で定めるものを除く)、同法第八十条第一項の許可を受けて業として有償で貸し渡す自家用自動車その他の国土交通省令で定める自家用自動車(前項に掲げる自家用自動車を除く) 六月
3 前二号に掲げる自動車以外の自動車 一年
12か月点検の定期点検が法令化されているのは、車検と車検の間となる12か月のタイミングで、国が定める基準に沿って車の構造や装置が正常に機能しているかどうかを点検し、必要な部品の交換や修理、調整などをすることで、交通の安全確保・公害防止及び故障予防の観点からです。
12か月点検を受けないと違反になる?
12か月点検は道路運送車両法により受けなくてはいけない法定点検として定められていますが、点検を受けていなくても罰金などの規定はありません。そのため、必要な点検ではあるものの、受けていなくても罰せられることはないため、受けていないというドライバーもいるでしょう。
ただ、法定点検を受けているかどうかは、当該車両のそれまでのメンテナンスが問題なく行われてきているかどうかを見定める時の指標にもなるものです。車の状態を補償する一つの目安となるため、譲渡や売却をする時に12ヶ月点検を受けていない車となると、マイナス査定につながることもあるでしょう。
また、12か月点検を受けていない車が故障してしまったり事故にあった時、必要な法定整備を受けていない車となると、本来受けることができたメーカー保証が保証対象外となってしまうことがあります。
自家用車には罰則はないものの、バスやトラックなどの事業用車については、3か月点検や6か月点検を受けていないと法律違反による罰則が科せられます。
12か月点検の点検項目
12か月点検の点検項目は、国土交通省の自動車点検基準定期点検基準第二条の別表第6で定められている、下記表の27項目となっています。
点検箇所 | 機構 | 点検項目 |
---|---|---|
かじ取り装置 | パワーステアリング装置 | ベルトのゆるみ及び損傷はないか |
制動装置 | ブレーキ・ペダル | 遊び及び踏み込んだときの床板とのすき間 ブレーキの効き具合 |
駐車ブレーキ機構 | 引きしろ ブレーキの効き具合 | |
ホース及びパイプ | 漏れ、損傷及び取付状態 | |
マスタ・シリンダ、ホイール・シリンダ、及びディスク・キャリパ | 液漏れ | |
ブレーキ・ドラム及びブレーキ・シュー | ドラムとライニングとのすき間 シューの摺動部分及びライニングの摩耗 | |
ブレーキ・ディスク及びパッド | ディスクとパッドとのすき間 パッドの摩耗 | |
走行装置 | ホイール | タイヤの状態 ホイール・ナット及びホイール・ボルトの緩み |
動力伝達装置 | クラッチ | ペダルの遊び及び切れたときの床板とのすき間 |
トランスミッション及びトランスファ | 油漏れ及び油量 | |
プロペラ・シャフト及びドライブ・シャフト | 連結部の緩み | |
電気装置 | 点火装置 | 点火プラグの状態 点火時期 ディストリビュータのキャップの状態 |
バッテリ | ターミナル部の接続状態 | |
原動機 | 本体 | 排気の状態 エア・クリーナ・エレメントの状態 |
潤滑装置 | 油漏れ | |
冷却装置 | ファン・ベルトの緩み及び損傷 水漏れ | |
エグゾースト・パイプ及びマフラ | 取付けの緩み及び損傷 | |
その他 | 車載式故障診断装置の診断の結果 |
12か月点検はどこで受けることができる?
法定点検とは、受けなくてはいけない必須の車の定期点検です。では、その12か月点検はどこで受けることができるのかご存知でしょうか。
12か月点検を受けることができるのは、車のディーラーやカー用品店、ガソリンスタンド、車検専門業者、民間の自動車整備工場となっています。法定点検となるため、認証のない整備工場以外でも受けられるのか心配になる方もいらっしゃると思いますが、実は認証を受けていなくても、一定の設備を所有しているところであれば受けることが可能となっています。ただし、認証の無い整備工場で12か月点検を受けた場合、結果問題なく点検を終えても点検ステッカーの交付は受けることができません。
12か月点検の費用はいくらくらい?
日本自動車整備振興会による平成27年度車検以外の定期点検・整備料金実態調査(全国)で、12か月(一年)点検の平均費用は以下の結果となっていました。(単位:円)
費用項目 | 軽自動車 | 自家用自動車(総排気量別) | |||
---|---|---|---|---|---|
1L~1.5L | 1.5L~2L | 2L~2.5L | 2.5L~ | ||
基本点検技術料 | 8,251 | 9,563 | 10,453 | 11,552 | 12,253 |
整備技術料 | 2,841 | 2,701 | 3,148 | 3,752 | 4,627 |
部品・油脂代 | 5,039 | 5,399 | 6,639 | 6,866 | 9,024 |
合計 | 13,448 | 15,072 | 17,368 | 19,038 | 21,824 |
12か月点検の記録を確認する方法
譲渡された車や、個人売買で購入した車の過去のメンテナンス記録や、12ヶ月点検を正しく受けていたのかどうかなどは、何を見ることで確認ができるのでしょうか。
点検整備記録簿
自動車の点検や整備をした時は、点検整備記録簿に点検の年月日・点検の結果・整備の概要・整備を完了した年月日を記載するよう法律で定められています。車の売却などの際は、点検整備記録簿があれば、12か月点検が行われているかどうか、どんな結果だったか等が確認できますので、査定時に確認がとれることでプラス査定にもつながっています。
点検整備ステッカー
点検整備済ステッカーについては、定期点検整備の普及促進を目的として設置された定期点検整備促進協議会にて国土交通省及び警察庁の後援のもと特別な承諾を得て作成・配布されているものになります。そのため、定期点検整備の認証を得た事業者で点検を受けた場合のみ交付され、認証を受けていない整備工場等では点検ステッカーは交付されません。点検ステッカーは表面で次回の実施月、裏面で定期点検整備実施日と整備をした工場とその認証番号、次回実施時期が確認できるため、車の運転者にとって目安になりますが、必ずしも交付があるわけではないのです。
まとめ
こちらでは、法定点検となっている12か月点検について詳しく解説しました。
12か月点検は自家用自動車の場合、受けていなくても特に罰則などはありませんが、車をより長く良い状態で乗り続けるためにも受けておくことをおすすめします。認証工場等ではなくても、最寄りのガソリンスタンドやカー用品店でも受けることができる点検整備です。ただし、カー用品店等では前もって予約をしなくてはいけないところもあります。飛び込みで行くと受けることができなかったり、長い待ち時間がある場合もありますので、12か月点検の時期が近くなってきたら、どこで受けることができるか、見積もりやかかる時間、予約方法についてなど、余裕をもって問い合わせておくと良いでしょう。